※この記事は諏訪市の発行する「広報すわ」の平成24年10月1日号の記事をもとに作成したものです。
平成24年に発足した連携プロジェクトチーム「SUWA±5μ」。
連携チームのメンバーである小松精機工作所・小松隆史研究開発部長(当時)は
自社で開発・特許出願した100μmの合金の砂の利用法を考える中で、
「砂×時計=砂時計」とひらめいた。
SUWA±5μの挑戦を追います(前編はこちらから )。
プロジェクト始動! しかし、、、
製品化への道は困難なものであった。
そもそも儲けが目的ではないこのプロジェクト。
この不景気の中赤字に寛容な企業はない。
(当時はリーマンショックにより、世界的に不況の時期
諏訪地域の企業も大きく打撃をうけた。)
しかし、市の産業連携事業補助金の採択の後押しや、
チームの固い結束・熱意が関係者を次第に動かした。
周囲の「(収益は)無理だと思うけど、まあ頑張れ」との声に背中を押され、
ついにプロジェクトは始動した。
しかし、、、
始動して間もなくつまずく。
砂が安定して落ちないのだ。
詳しく検査すると砂同士がくっついていることがわかった。
また、金属とガラスという異種の材料・技術の融合も未知の領域だった。
完成までには、計画通りにいかないことや、
チーム内で利益相反が生じて焦ったりすることもしばしば。
その都度お互いにひとつひとつ議論を重ね、
マクロ的な視点での話し合い、仮説・検証による解決をした。
紆余曲折を経て完成した超高精度砂時計。
反響は予想以上だった。
記者発表には多くの人が集まった。
「まずはやらないと、こうはならなかった。
やったら思いがけない良い波及効果が生じました。
砂時計自体では儲からなくても、人に興味を持ってもらえたし、
チーム全員のイメージアップにもなった。
十分すぎるほどです。」
主な成果については、
「製造面では、直接消費者につながる販売経路がわかったこと、
中小企業の技術で完成品を産み出せたこと、
市場の声を直接聞ける仕組みができたことです。
観光面では、砂時計に興味を持ち、遠方からわざわざ訪れた人もいました。」
連携室は砂時計の製造過程を実際に見てもらうため、諏訪に招くことも考えているという。
”産業観光”の分野での取り組みとしても期待される。
(その後、「SUWA±5μ-超高精度金属砂時計」の製造工場を見学し、
made in SUWAブランドのストーリー性や製造現場を見学するツアーを実施した)
成功の要因を聞いた。
「仕事として楽しかった。
また、最初から儲けが目的でなかったのが良かったんです。」
わずかな収益はまずは被災地支援に使うという。
ブランドの構築へ向け考える
SUWA±5μが目指すブランド像を聞いた。
「精密、硬派、そして、伝統を守りつつ新しいもの好きという諏訪人の気質でしょうか。
ブランドイメージは生産者が作るのではなく、消費者が決めるものだと思います。」
その上で、生産者側は理念を明確にすること、
新しい知識・価値観を付与すること、そして継続すること。そう指摘する。
「今後はいろいろな人たちからも『このブランドイメージでこんなことをやりたい』
と自由に案をだしてもらったらいいんじゃないかな。」
と話す。
SUWA±5μの取組みは「SUWAブランド」構築への布石としても、脚光を浴びている。
これからの新展開にも期待して
小松氏は、市の連携室に対して、
「前向きでやる気のある人の人脈を持っていること、
職員の迅速な対応、公的な機関が関与することの安心感・信頼性、
メディアとのやり取りのノウハウもわかっている。」と感謝する。
SUWA±5μは第2弾として、色・サイズ・価格帯を
一新した新商品を、年内に発表したい意向だ。
(平成28年6月10日記者発表「Mg85Al10Ca5」)
「実は第3弾、第4弾の構想もあるんです。
それは?と聞くと「秘密」とはぐらかされた。
「しかし」と続け、
「今までは製造が主だったが、進め方や販売の現場の人の思想もわかった。
徐々に展開も早め、いい意味で常に顧客を裏切るようなものを、
当ブランドとして発表していきたい。
あそこは、いつも何かやっていると興味を持ってほしい。」
と、意欲を示した。
最後に、SUWA±5μの今後についてお聞きした。
「今後の展開として
『ブランドの確立→収入の確保→地元の人の雇用』を見据えています。
諏訪が誇る硬派の取組み、ぜひご期待ください。」
と力強く語ってくれた。
「Mg85Al10Ca5(燃えないマグネシウムを使用した砂時計)」の他にも、
SUWA皿daや月追揺杯といった商品を生み出している。
今後も目が離せない。